物語のおわり (湊かなえ)
原作のラストはわからない。しかし、わたしがこの物語をドラマ化するのなら、このラストにしよう。
携帯電話を取り出して天に向かって伸びるストローブマツを写す。メールに添付して、メッセージを打ち込む。
『わたしはおもしろい物語を作る人になる!』
湊かなえの短編集。ある未完の短編集をめぐって、それぞれの物語につながりが生まれている。こちらの短編に出ていた人物が、こちらにも出ていたりだとか、人物はリンクしている。
それぞれの人物の胸の内、現状に対する不満、過去との決別、新しい人間関係、それぞれが持つ悩みを浮かび上がらせ、未完の小説に寄り添わせ、各々の物語をつくっている。
湊かなえらしく、地方に生きる、もしくは地方から都心に出てきた普通の人々の胸のうちを、写実的に、時にサスペンスを交えて描き出す。
いちおうは、タイトルにもあるような、「終わりのない物語」あるいは「物語そのもの」がテーマとしてはあるのだろうが、それよりも各章で語られる人々の暮らしぶりが、雑誌でも読むように共感しながら、現実的なライフスタイルを取り込むことができるのが、この小説の一番の魅力になっているのではないかと思う。
伏線の繋げ方は、やはり一流のものがある。